COLLINS  R-388A(51J-4)


COLLINS  R-388(51J-3)


【諸元】

  M
ODEL:51J3
  YEARS:1950
  PRICE:$1099
  BAND:0.5M-30Mhz/30BAND
  TYPE:Dual/Triple Conv
  FILTER:MECHANICAL/CRYSTAL
  IF:2.5M-1.5M/2.5M-3.5M/500Khz
  TUBE:18
  COIL UNIT BAND
   BAND1 :0.50-1.00Mhz
   BAND2 :1.00-2.00Mhz
   BAND3 :2.00-4.00Mhz
   BAND4 :4.00-8.00Mhz
   BAND5 :8.00-16.0Mhz
   BAND6 :16.0-32.0Mhz

【魅力】
第2次大戦後の米軍の主力受信機として、R274(SP600/SX73/HRO60)シリーズ・・・・R388(51J1〜4)シリーズ・・・・R390(R389/390/391/392/390A)シリーズ・・・・51Sシリーズ・・・・シンセサイザ機種へと変遷する中で、電気的構成とギヤーメカニズムを見事に融合させた最高級受信機の一つです。
特に、アナログ方式で1Khz直読、1Mhz毎の30バンド切り替え、PTOによる高安定度等とエポックメイキングな名機です。
軍用仕様であることから、使用されている部品とその材質は素晴らしいもので、受信機の特性として現在でも実用機として優れた性能を有しています。

1.周波数直読
「1Khzが直読出来るんだってさ!」「30バンド切り替えだってよぉ」。とんでもない受信機が世の中にはあるもんだとその当時は思いましたね。「夢の受信機」です。そりゃそうですよ。当時の受信機の周波数読みとり精度は、Mhz台、100Khz台、10Khz台まで目盛りがついていれば良い方で、周波数直読といってもメインダイヤルをキャリブレータで校正してセットし、スプレッドダイヤルで表示してある周波数を読み取っていた程度だったのですから。

また、スプレッドダイヤルの周波数表示精度は受信するバンドによって異なり、低い周波数ではダイヤルシャフトの回転角度に対する周波数の変化が小さいために、細かく表示が出来るのですが、高い周波数では回転角度に対する周波数変化が大きいため、細かく表示が出来ずせいぜい50Khz程度のメモリが最小単位です。
こんな具合ですから、受信する周波数がわかっていても、その付近を細かにダイヤルつまみをを左右に回しながら、相手が出てくるのを待つと言った具合です。

アマチュアバンドはスプレッドダイヤルにメモリがついていますからまだ良いのでが、海外放送を受信する場合にはメインダイヤルの周波数表示だけが頼りですから、目的の周波数あたりへダイヤルを持っていって、スプレッドダイヤルをぐるぐると回しながらそれとおぼしき電波の入感を探るのです。

そのころの他のメーカーの受信機の周波数読みとり精度は、USAのNATIONAL社のNC303という受信機が7Mhzで2Khzが直読出来ると言うのが最高で「DREAM RECIEVER」のチャッチフレーズで評判となりましたが、日本国内で新品が約30万円と言う値段で販売されていました。といってもとても手が出せる金額ではありませんでした。

ところがこの51Jシリーズは、0.5Mhzから30Mhzまであらゆる周波数で1Khzが直読出来るのですからまさに驚異そのものだったのです。しかも、周波数に対するダイヤルの変化が一定であるためにいわゆる周波数直線そのものです。(今から見れば当たり前ですが)キャリブレータを動作させれば100Khz毎に周波数校正が出来てそのずれもダイヤルスケールで補正できるのです。

さらに、1Mhz毎に30バンド切り替えが出来ると言うのです。今のシンセサイザの無線機から見れば当たり前のことですが、アナログでやっているのですからそれは贅沢なことです。まさに夢の受信機そのものでした。
  
2.安定度
我々が使っていた受信機は、海外放送を受信し終わって一晩電源を切って次の日に受信しようとして電源を入れても、周波数ダイヤルをそのままの状態で受信できるような安定度はありませんでした。
だいたい次の晩はまたダイヤルをその付近をぐるぐると回して「おお、いたいた」などと一人でつぶやきながら受信する状態がまあ普通でしたね。ですから、待ち受け受信などはなかなか出来ず、インターバルの頭からきちんと聞けるような受信機を持っていた人はそう多くはなかったと思います。
また、バンドスイッチをいったん切り替えて他のバンドにいき、またもとのバンドに切り替えて戻っても同じところで電波が受信できるような状態ではなかったんですが、良いことに、ダイヤルの読みとり精度が前に紹介したような状態ですから、あまり目立たなかっただけのことでした。

ところが、51Jの受信安定度は素晴らしいものだったんです。何にしても、雑誌に書いてある周波数へダイヤルをセットすれば、目的の電波のインターバルの頭からきちんと聞こえるのです。もし聞こえなければ、コンディションが悪いんです。
それから、前の晩に聞いて電源を落とし、次の日にも電源を入れるだけで放送が聞こえるんです。「昨日はコンディションが悪かったけど、今日はなかなか良いぞ」などと言えるんです。「おお、いたいた」とは大違いです。
ですから、51Jシリーズは本当の意味で待ち受け受信が出来る精度と安定度を備えた受信機です。

当時自作の受信機で「JJY」をBFOをかけて受信していると、時間の経過と共にビート音が「フルフル・・ブー・・プー・・ポー・・ピー・・ヒィー・・シー」とどんどん周波数が変わってしまいます。ところが、PTOを使ってテストをやってみたことがあるのですが、電源を入れて「プルン」と言ったきりほとんど発振周波数が変化しなかったことを記憶しています。もっとも、実際には長時間測定したわけではないし、定量的な測定もしなかったんですから感覚的な話になって恐縮ですが、まあ感じとしてそんな具合だったと思って下さい。

3.メカニカルフィルタ
メカニカルフィルタ出現以前は、受信機の選択度を改善する方法として、クリスタルフィルタを使用する方法と中間周波数を50〜80Khzに下げる方法があります。これらの構成による選択度の改善方法は、第2次世界大戦の日本軍や米軍の受信機にも見ることができます。
戦後においても、米国のNATIONAL社やHALLICRAFTERS社などでも受信機に採用している機種もありました。また日本のアマチュア無線業界でも昭和30年代(1955-65)にQ5'ERと称して受信機の中間周波数を50Khzまで下げて、「同調コイルのQが同じであれば周波数が低いほどパスバンドは狭くなる」という理屈に基づいて狭帯域特性を得ていたアダプターがありました。

しかし中間周波数を低くすると言うことはイメージレシオが下がると言うことになりますから、イメージレシオを確保する上から第1中間周波数を高く取り、ダブルスーパー構成にしなければなりませんでした。
これ以外にも、「ハイフレ」などと言ってラティス型のクリスタルフィルタを使った9Mhz帯とか5Mhz帯のバンドパスフィルターも高額ながら存在はしていました。

そこへ「メカニカルフィルタ」の登場です。
メカニカルフィルターは中間周波数の電気信号を機械振動に変換して機械振動子を経由させ、再び電気信号に変換する機構によりバンドパス特性を得るものです。メカニカルフィルタを駆動する電気信号の周波数は、数十Khzから数百Khzの範囲で動作することが可能です。このため455Khzとか500Khzの中間周波数で直接フィルターをかけることが出来ますから、シングルスーパーでも中間周波数が50Khzの場合に比べると、イメージレシオを確保しながら選択度を確保させることが可能となり、受信機の構成が簡略化する事が出来ます。

51J4に使用されているメカニカルフィルタは、中心周波数が500Khzで羊羹型をした「Bタイプ」です。51J4は51J3の第2中間周波増幅段の1段目のIFTと真空管を取り外してフィルタアッセンブリを取り付け、BFOシャフトを同軸シャフトにして、外側のシャフトカラーでメカフィル3本を切り替える構造に変更したものです。
従ってネームプレートはR388または51J3になっていても、実際にはフィルタが搭載されていたりするものもあります。
このフィルタアッセンブリは、6BA6を2本搭載し、フィルタユニットは1Khz/3Khz/6Khzの計3カ所のポストがあり、これを切り替えるためのスイッチ等を装備していますが、フィルタは通常1本が標準装備として搭載されあとの2本はオプションとなっています。今でもわたしの手元にこの51J4用アッセンブリのジャンクがいくつか残っています。

  
R-388A メカニカルフィルタ−が3本搭載されている。


R-388 メカニカルフィルタは搭載されていない。

当時、日本の国際電気から発売されたメカニカルフィルタはやや太めのブロック型電解コンデンサのような円い筒型をしたものでした。値段は4950円で05K/1K/2Kの3タイプだったと記憶しています。
このメカニカルフィルタは挿入損失が大きく約40DB位あったと思います。ですから真空管を1本増設して挿入損失を相殺して使用していました。

【弱点】
1.キャリブレート・・・・「シー」
受信機をBFO/ON受信状態にして、キャリブレータを動作させ、任意の100Khz付近にダイヤルを回して行くと、100Khz前後の±20Khz付近から「シー」と言う音が聞こえ、そのうちにビート音が聞こえてきます。これは通常の受信信号に比べてはるかに強力なキャリブレーション信号によりAGCが動作して、受信機の高周波増幅段及び中間周波増幅段の利得が自動的に下がる方向に調整されるために起こる現象です。
この受信機の場合、キャリブレーション信号が強力なためにこの様な現象(感度抑圧)が起きるのですが、実際の受信状態でどの程度隣接信号で感度抑圧現象がどの程度発生するのか特性を測定してはいませんので確認出来ていません。
今後この現象の具体的な受信特性への影響について機会があれば測定をしてみたいと思っています。

2.ダイヤルドラムは「焼ける」
受信機のダイヤルエスカッションに見えるMhz/100Khz表示の横行ダイヤル、これが1バンド毎に切り替わり、常に使用しているバンドのみが表示されているという素晴らしい機構です。
この素晴らしい機構なのですが、これに使用しているダイヤルドラムの表示面が年月が経つと茶色に変色してくるのです。この変色は、受信機がケースに入って保管されていた場合には、エスカッションで前面に曝されているスケールのみが変色してしまうといういやな状態になります。
その大きな原因は、スケールメモリの紙にあるのではなく、紙の接着材と光合成により変色してしまいます。
しかし、今ではこのスケールシートをレプリカで販売していますから、古びた感じはなくなりますが、オリジナルにこだわらなければきれいになります。

3.チューニングダイヤルには「リダクションノブ」
メインダイヤルのつまみ1回転で100Khzです、AM時代にはこれで良かったのですが、SSBを受信するとなるとこれではちょっと変化が大きすぎます。
これに対応できるように、いろんなメーカーからシャフトの回転を減速するための「リダクションノブ」が発売されました。その中で特に有名なものがコリンズ社製のリダクションノブです。
このリダクションノブの減速比は1:4になっていますから、つまみ1回転100KhZから25Khzに減速されます。従って、SSB受信も実にスムースにチューニング出来るようになります。

この取り付けは、受信機のメインつまみを外してシャフトにオフセンタ構造で、ディファレンシャルギヤを2本のタッピングビスで取り付け、リダクション用ノブを取り付けて完了です。ところが、このタッピングビスを取り付けるためのガイド孔をあける際にドリルの歯を深く入れすぎて、100Khz表示のダイヤル円盤に穴を空けてしまったものを見たことがあります。「お気の毒さま」

4.ドラム駆動用「スチール入りワイヤ」
受信機のダイヤルエスカッションに見えるMhz/100Khz表示の横行ダイヤルについては前にも少し紹介しましたが、このドラムはMhz切り替えシャフト連動して「スチール入りワイヤ」で回転させています。早い話が「糸かけ」です。
軍用と民生では同じ糸かけでもこんなに違うのですが、まあそれは良いとして、このスチールワイヤには外側にビニールコーティングがしてあり、古くなると(みんな古い)これが硬化して折れてしまうものがあります。
ダイヤルドラムの回転は、ワイヤの太さと回転角によってバンド目盛りの表示間隔と同期していますから、ワイヤの外側ビニールが取れてしまうと、バンド目盛りの回転とメガヘルツチェンジシャフトの回転とが同期が取れなくなって、横行ダイヤルのスケールの位置が上下にずれてしまいます。

【メンテナンスポイント】
1.オルダムカプラ
「オルダムカプラ」とは、メインチューニングダイヤルシャフトとPTOを接続するフレキシブルカプラのことを言います。メンテナンスのポイントは3つあります。

第1はカプラ両面にグリスを塗布することです。わずかではありますが、必ずスライドしながら回転しますので接合面の潤滑はどうしても必要です。

第2はカプラのオス側とメス側との間に間隙が必要なことです。この間隙は説明書によれば1/32吋と定められています。シャフト側とPTO側が3次元的に全く直角であれば間隙はいらないのですが、そうではないためにフレキシブルカプラが必要になります。

第3はスプリングの装着です。チューニングシャフトのオス側のツノとPTOのオス側のツノの間にスプリングを張ります。このスプリングを装着しないと、オルダムカプラの間隙が遊びとなって、チューニングシャフトのバックラッシュとなってしまいます。

【その他】
1.機種種別
51Jシリーズには51J1〜4があり、軍用名称では51J3をR388、51J-4をR388Aと言います。51J1〜3まではメカニカルフィルタは装備していませんが、51J4はメカニカルフィルタ装備となっています。


2000.11.09 初版
2000.11.22 2版



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